
焼肉店や焼鳥屋では、厨房設備、排気ダクト、換気設備、無煙ロースター、ガス設備、電気設備など、さまざまな設備が使用されています。新規開業時の設備工事だけでなく、店舗改装、機器の入れ替え、排気設備の修理、ダクト清掃、厨房機器の更新など、営業開始後にも工事が必要になることがあります。
飲食店の設備工事では、一般的な工事現場と同様に、転倒、落下、感電、火災などの危険があります。さらに、火気や油を扱う厨房設備、客席内に設置されたロースター、天井裏や床下を通る排気ダクトなど、飲食店特有の設備にも注意が必要です。
また、既存店舗の工事では、営業を継続しながら作業を行う場合や、定休日や営業時間外の限られた時間内で施工する場合もあります。工事内容によっては、店舗スタッフ、お客様、近隣店舗、通行人への影響も考慮しなければなりません。
そのため、焼肉店や焼鳥屋の設備工事を安全かつ計画的に進めるには、工事前に想定される危険や問題を洗い出し、適切な対策を準備することが重要です。
この記事では、焼肉店や焼鳥屋などの飲食店における設備工事を対象に、リスク管理の考え方、重要性、具体的な進め方について分かりやすく説明します。
リスク管理とは?
飲食店の設備工事におけるリスク管理とは、工事中に発生する可能性のある事故、設備トラブル、施工不良、営業への影響、工期の遅延などを事前に把握し、必要な対策を講じる取り組みです。
具体的には、次のような流れで進めます。
-
工事内容と店舗内の設備状況を確認する
-
発生する可能性のある危険や問題を洗い出す
-
発生頻度と影響の大きさを確認する
-
優先的に対応するリスクを決める
-
具体的な予防策を実施する
-
工事中の状況を確認する
-
必要に応じて作業方法や対策を見直す
焼肉店や焼鳥屋では、排気設備、ガス配管、電気配線、火気設備などが複雑に配置されていることがあります。店舗の図面が残っていても、過去の改装や設備更新によって、実際の配管や配線の位置が図面と異なる場合があります。
そのため、書類上の確認だけでなく、現地調査を行い、実際の設備状況を確認することが重要です。
なぜリスク管理が重要なのか?
-
作業員と店舗スタッフの安全を確保するため
飲食店の設備工事では、脚立や足場を使った天井作業、電動工具による穴あけ、重量のある厨房機器の搬入、ガス配管や電気設備の取り扱いなどが行われます。
排気ダクトや換気扇の工事では、天井裏や狭い場所で作業することがあります。足元が不安定な状態で作業すると、転倒や墜落につながる可能性があります。
また、既存設備の周辺には、油汚れや水分が残っている場合があります。床が滑りやすい状態では、工具や資材を運搬する際に転倒しやすくなります。
営業中または営業準備中の工事では、施工業者だけでなく、店舗スタッフが作業区域に立ち入る可能性もあります。作業範囲を明確にし、立入禁止区域を設けるなど、店舗関係者を含めた安全対策が必要です。
-
火災や感電のリスクを抑えるため
焼肉店や焼鳥屋では、ガス火、炭火、電熱機器、厨房用電気設備など、熱を発生させる設備が多く使用されています。
工事中に火花が出る工具を使用する場合、周辺に油汚れ、可燃物、紙類、清掃用薬剤などが残っていると、火災につながる可能性があります。
特に、排気ダクトや換気扇の内部には、長期間の使用によって油分が付着していることがあります。溶接や切断作業を行う場合は、火花が油汚れや可燃物に届かないよう、事前の清掃や養生が必要です。
電気設備の工事では、対象となる回路を停止し、通電していないことを確認してから作業を始めます。複数の分電盤や回路がある店舗では、停止する設備を誤らないように確認することも重要です。
また、ガス設備の交換や接続作業では、元栓の閉止、換気、漏れの確認など、決められた手順に沿って作業する必要があります。
-
営業への影響を抑えるため
飲食店の設備工事は、営業時間、定休日、予約状況、仕込み時間などを考慮して計画する必要があります。
工事が予定どおり終わらない場合、開店時間の変更や臨時休業が必要になることがあります。厨房機器や排気設備が使用できなければ、通常どおりの営業が難しくなる場合もあります。
そのため、工事前に作業範囲、必要時間、設備停止の時間帯、復旧確認の方法を明確にすることが重要です。
また、予定外の不具合が見つかった場合に備え、追加作業の可能性や対応方法を事前に確認しておくと、店舗側も判断しやすくなります。
営業への影響を抑えるためには、施工業者だけでなく、店舗責任者、厨房担当者、施設管理者などの間で、工事スケジュールを共有しておく必要があります。
-
工事費用の増加を防ぐため
事前調査が不十分なまま工事を始めると、配管や配線の位置が想定と異なり、追加作業が必要になることがあります。
例えば、新しい厨房機器を設置する際に、既存の電源容量が不足していたり、ガス配管の接続位置が合わなかったりする場合があります。
排気設備の工事では、既存ダクトの寸法、材質、接続状態、油汚れの付着状況などによって、当初の作業計画を変更しなければならないことがあります。
また、機器の搬入経路が狭く、出入口や通路を通れない場合は、分解搬入や別の搬入口の確保が必要になることもあります。
工事前に設備条件や搬入経路を確認することで、施工途中の変更や追加作業を減らしやすくなります。
-
施工品質を確保するため
焼肉店や焼鳥屋の設備は、設置後に継続して使用されるため、安全性だけでなく、使いやすさや維持管理のしやすさも重要です。
排気設備では、接続部分に隙間があると、煙や臭気が漏れる可能性があります。ダクトの勾配や接続方法が適切でなければ、油分が溜まりやすくなったり、清掃しにくくなったりすることがあります。
無煙ロースターや厨房機器では、設置位置が適切でないと、スタッフの作業動線やお客様の利用に影響する場合があります。
また、点検口や清掃口が使いにくい位置に設置されると、日常点検や定期清掃が難しくなります。
施工後の安全性と維持管理まで考慮し、工事途中に確認を行うことが、施工品質の確保につながります。
-
お客様や近隣への影響を抑えるため
既存店舗や商業施設内の店舗では、工事による騒音、振動、粉じん、臭気などが、周囲に影響することがあります。
営業中の店舗で工事を行う場合は、お客様の通行経路と作業区域を分け、工具や資材が客席側に出ないように管理する必要があります。
また、建物内の共用通路やエレベーターを使用して機器を搬入する場合は、他の店舗や利用者への配慮が求められます。
排気設備の試運転時には、煙や臭気の排出状況を確認し、近隣の建物や店舗に影響がないか確認することも重要です。
工事時間や搬入時間に制限がある施設では、事前に管理者と調整し、決められた条件に沿って作業を進めます。
リスク管理の具体的な方法
-
現地調査を行う
飲食店の設備工事では、工事開始前の現地調査が重要です。
現地調査では、対象設備だけでなく、その周辺にある配管、配線、排気経路、給排水設備、天井内の状況などを確認します。
主な確認項目には、次のようなものがあります。
・既存設備の種類と設置状況
・排気ダクトの経路と接続状態
・換気扇や排気ファンの位置
・ガス配管と元栓の位置
・電源容量と分電盤の状態
・給排水設備の位置
・機器の搬入経路
・客席と厨房の作業動線
・天井や床の構造
・周辺にある可燃物や油汚れ
・工事中に停止する必要がある設備
・営業や仕込みへの影響
図面がある場合でも、現場の状況と一致しているか確認することが必要です。
-
リスクアセスメントを実施する
現地調査の内容をもとに、工事中に発生する可能性のある危険や問題を洗い出します。
焼肉店や焼鳥屋の設備工事では、次のようなリスクが考えられます。
・脚立や足場からの転落
・天井材や工具の落下
・厨房機器や資材の搬入時の挟まれ
・油や水分による床面での転倒
・電気設備による感電
・ガス漏れ
・火花や熱による火災
・排気ダクト内の油汚れへの着火
・粉じんや切削片の食品や食器への付着
・既存設備や内装の破損
・工事時間の延長による営業への影響
・設備復旧後の動作不良
・排気や換気能力の不足
・近隣への騒音や臭気の影響
洗い出したリスクについて、発生する可能性と影響の大きさを確認し、優先的に対応するものを決めます。
-
工事区域を明確にする
営業中または営業準備中の店舗では、工事区域と店舗スタッフの作業区域を明確に分ける必要があります。
カラーコーン、案内表示、養生シートなどを使用し、関係者以外が立ち入らないようにします。
客席内で工事する場合は、工具、部品、電源コードなどが通路にはみ出さないように管理します。
厨房内では、調理器具、食材、食器などを工事区域から移動させ、粉じんや汚れが付着しないように養生します。
作業後には、工具や切削片、配線くず、金属片などが残っていないか確認することも重要です。
-
火気作業の管理を行う
溶接、切断、研磨など、火花や熱が発生する作業を行う場合は、事前に周囲の状況を確認します。
油汚れや可燃物がある場合は、作業前に除去または移動します。移動できない設備については、不燃性の養生材などで保護します。
消火設備を準備し、火気作業中だけでなく、作業終了後も周辺に異常がないか確認します。
排気ダクトや換気設備の近くで火気作業を行う場合は、ダクト内部の油汚れの状態にも注意が必要です。
目に見える範囲だけでなく、火花や熱が届く可能性のある場所を確認してから作業を開始します。
-
電気・ガス設備を安全に停止する
電気設備やガス設備の工事では、作業対象となる設備を停止し、安全な状態を確認してから作業を始めます。
電気工事では、ブレーカーを切るだけでなく、対象回路に通電していないことを確認します。誤って電源が入らないように、操作禁止の表示を行う方法もあります。
ガス設備では、元栓を閉め、配管内にガスが残っていないことを確認します。作業後は接続部分を点検し、漏れがないことを確認してから使用を再開します。
店舗スタッフにも、どの設備が停止しているのか、いつから使用を再開できるのかを共有する必要があります。
-
作業手順と役割を共有する
工事開始前に、施工担当者と店舗責任者の間で作業内容を確認します。
確認する内容には、次のようなものがあります。
・作業開始と終了の予定時間
・作業区域
・停止する設備
・火気作業の有無
・搬入と搬出の経路
・店舗スタッフが立ち入れない場所
・緊急時の連絡方法
・作業終了後の確認方法
・試運転の手順
・営業再開の判断方法
複数の施工業者が入る場合は、電気、ガス、排気、内装など、それぞれの作業順序を調整します。
作業順序が不明確だと、施工済みの部分を別の作業で傷つけたり、配管や配線が干渉したりする可能性があります。
-
作業開始前の確認を行う
作業当日は、予定している工事を安全に行える状態か確認します。
主な確認項目は次のとおりです。
・電気やガスが適切に停止されているか
・火気の周辺に可燃物がないか
・床面に油や水分が残っていないか
・脚立や足場に異常がないか
・必要な保護具が用意されているか
・工具や機械に不具合がないか
・搬入経路が確保されているか
・店舗スタッフに工事内容が共有されているか
・食材や食器が適切に保護されているか
・他の作業と重なっていないか
・緊急連絡先が確認されているか
前日の状況から変化している場合もあるため、工事開始時に改めて確認します。
-
工事中のモニタリングを行う
工事開始後も、作業区域や設備の状態を継続的に確認します。
作業中に新たな配線や配管が見つかった場合は、無理に作業を続けず、設備の用途や接続先を確認します。
工具の使用によって想定以上の振動や粉じんが発生した場合は、作業方法や養生方法を見直します。
また、工事時間が予定より長くなる場合は、店舗責任者に早めに共有し、営業や仕込みへの影響を確認します。
問題が発生した際は、その場で対応するだけでなく、原因を確認し、同じ問題が繰り返されないように対策を見直します。
-
試運転と動作確認を行う
設備工事の完了後は、外観だけでなく、実際に設備を動かして確認します。
排気設備では、ファンの回転、異音、振動、排気の流れ、接続部分からの漏れなどを確認します。
無煙ロースターや厨房機器では、電源、点火、温度調整、吸引状態、安全装置などを確認します。
ガス設備では、接続部分の漏れがないことを確認します。電気設備では、ブレーカーや配線に異常がないか確認します。
試運転中に異音、異臭、発熱、煙、振動などが確認された場合は、使用を開始せず、原因を確認する必要があります。
-
清掃と復旧確認を行う
工事終了後は、作業区域を清掃し、営業に支障がない状態へ戻します。
床、厨房設備、客席、テーブル、通路などに、金属片、ねじ、配線くず、粉じん、油汚れが残っていないか確認します。
養生材を撤去した後は、既存設備や内装に傷や汚れがないか確認します。
また、停止していた設備がすべて正常に復旧しているか、照明、換気、ガス、給排水なども含めて確認します。
店舗責任者と施工担当者が一緒に確認し、問題がなければ営業再開へ進みます。
飲食店の設備工事で注意したいポイント
-
営業時間だけでなく仕込み時間も確認する
飲食店では、開店前に仕込み、清掃、機器の予熱などを行います。
営業時間外であっても、店舗スタッフが厨房を使用する時間帯があります。そのため、営業時間だけを基準に工事時間を決めるのではなく、仕込み開始時刻や清掃時間も確認する必要があります。
-
食品や食器への汚染を防ぐ
工事中に発生する粉じん、切削片、油汚れなどが、食品、食器、調理器具に付着しないようにします。
工事区域内の食品や調理器具は移動させるか、適切に覆って保護します。
工事後は、作業場所だけでなく、その周辺も清掃し、営業前に店舗側で衛生状態を確認します。
-
既存の油汚れを軽視しない
焼肉店や焼鳥屋では、排気設備、フード、ファン、壁面、天井周辺などに油分が付着していることがあります。
油汚れは滑りやすさの原因になるだけでなく、火気作業時のリスクにもなります。
設備工事と清掃を同時に行う場合は、作業順序を検討し、必要な範囲を事前に清掃してから工事を始めます。
-
排気能力と給気のバランスを確認する
排気ファンやダクトを交換した後は、排気量だけでなく、店舗内への給気が確保されているか確認することも重要です。
排気能力が高くても、必要な空気が店舗内に入らなければ、ドアが開きにくくなったり、空調に影響したりする場合があります。
排気設備の工事では、厨房や客席の空気の流れを含めて確認する必要があります。
-
清掃や点検のしやすさを考慮する
設備を設置する際は、施工時だけでなく、その後の清掃や点検も考慮します。
排気ダクト、ファン、無煙ロースター、油受けなどは、定期的な清掃や点検が必要です。
点検口や清掃口の位置が使いにくいと、メンテナンス作業が難しくなります。
設備の周囲に必要な作業スペースが確保されているか、部品を取り外せるか、清掃用具が届くかなども確認します。
-
変更内容を記録する
設備の交換や改修を行った場合は、工事内容を記録しておくことが大切です。
変更した配管、配線、機器、ダクト経路、点検口の位置などを記録しておくと、将来の修理や改装時に確認しやすくなります。
施工前後の写真、図面、機器情報、試運転結果などを保管することも、今後の設備管理に役立ちます。
工事完了後もリスク管理を継続する
設備工事が完了した後も、安全な状態を維持するためには、日常点検と定期的なメンテナンスが必要です。
焼肉店や焼鳥屋では、油煙、すす、ほこりなどが排気設備や厨房機器に付着します。
使用を続けることで、吸引力の低下、異音、振動、煙の逆流、臭気の残留などが発生する場合があります。
店舗スタッフは、日常的に次のような点を確認するとよいでしょう。
・排気音に変化がないか
・吸引力が低下していないか
・煙や臭気が客席に残っていないか
・設備に異常な振動がないか
・ガスや焦げたような臭いがしないか
・電源コードや接続部分に異常がないか
・油受けやフィルターが汚れていないか
・点検口や清掃口が使用できる状態か
異常を感じた場合は、使用を続ける前に設備の状態を確認することが重要です。
焼肉店や焼鳥屋などの飲食店における設備工事では、一般的な施工上の安全管理に加え、火気、油汚れ、ガス設備、排気設備、食品衛生、営業への影響などを考慮する必要があります。
工事を安全かつ円滑に進めるためには、現地調査、リスクアセスメント、作業区域の分離、火気管理、電気・ガス設備の停止確認、作業手順の共有、試運転、清掃、復旧確認を確実に行うことが重要です。
また、設備を設置して終わりにするのではなく、その後の点検や清掃が行いやすい状態に整えることも、長期的なリスク管理につながります。
店舗ごとに、厨房や客席の広さ、使用する設備、排気経路、建物条件、営業形態は異なります。工事前に現場の状況を確認し、店舗側と施工側が必要な情報を共有しながら進めることが、安全性と施工品質の確保につながります。

焼肉店・焼鳥屋の排気設備や厨房設備、店舗設備工事に関するご相談は、株式会社野田ハッピーのお問い合わせフォームよりご連絡ください。
