
飲食店の厨房では、調理に伴って煙や油煙、においが発生します。特に焼肉店、焼鳥店、鉄板焼店などでは、排気に含まれる油分や煙、調理臭への対策が必要になります。
こうした排気対策に使用される設備として、「排煙集塵機」と「消臭機」があります。どちらも厨房排気を処理する設備ですが、取り除く対象や仕組み、設置目的は同じではありません。
排煙集塵機は、主に煙や油の微粒子を捕集する設備です。一方、消臭機は、排気に含まれるにおい成分を低減することを目的としています。
本記事では、排煙集塵機と消臭機の違い、それぞれの役割、適切な選び方、併用する場合の考え方について解説します。
排煙集塵機とは
排煙集塵機とは、厨房から排出される空気に含まれる煙、すす、油の微粒子などを捕集する設備です。
肉や魚を焼いたり、油を使用して加熱調理したりすると、目に見える煙だけでなく、細かな油滴や固体粒子が空気中に発生します。これらを含んだ排気をそのまま屋外へ放出すると、排気口周辺の壁や屋根が汚れたり、近隣の建物や洗濯物などに油分が付着したりする可能性があります。
排煙集塵機は、こうした粒子状の物質を排気から分離し、屋外へ放出される煙や油分を抑えるために使用されます。
集塵方法には、フィルターを通して粒子を捕集する方式や、電気の力を利用して微粒子を捕集する方式などがあります。厨房排気では油分を多く含むことがあるため、処理する排気の性質や風量に対応した設備を選定する必要があります。
排煙集塵機が処理する主なもの
排煙集塵機が主に処理するのは、排気中に浮遊している粒子状の物質です。
代表的なものとして、調理中に発生する煙、すす、細かな油滴、粉じんなどが挙げられます。
焼肉や焼鳥などの調理では、食材から出た脂が加熱されることで油煙が発生します。油煙は非常に細かな油の粒子を含んでおり、ダクト内部や排気ファン、排気口周辺に付着しやすい性質があります。
排煙集塵機を設置することで、排気中の粒子を一定程度捕集し、ダクトや排気口周辺への油汚れの蓄積を抑える効果が期待できます。
ただし、集塵機は基本的に粒子を捕集する設備であり、ガス状のにおい成分をすべて取り除くものではありません。煙が目立たなくなっても、調理臭が残ることがあります。
消臭機とは
消臭機とは、排気に含まれるにおい成分を低減するための設備です。脱臭装置と呼ばれることもあります。
調理によって発生するにおいには、焦げたにおい、肉や魚を焼いたときのにおい、油を加熱したときのにおい、香辛料や調味料のにおいなどがあります。
これらのにおいの多くは、空気中に含まれるガス状の成分によって感じられます。そのため、煙や油の粒子を集塵機で取り除いただけでは、においが十分に低減されない場合があります。
消臭機は、吸着、洗浄、酸化、燃焼などの方法によって、排気中のにおい成分を除去または分解します。飲食店では、活性炭などの吸着材を使用する方式が採用されることがあります。
環境省の飲食店向け臭気対策資料でも、油煙などの粒子とガス状のにおい成分は性質が異なり、それぞれに適した処理が必要であることが示されています。
消臭機が処理する主なもの
消臭機が主に処理するのは、排気に含まれるガス状のにおい成分です。
調理中に発生するにおいは、複数の成分が混ざり合って構成されています。店舗の業態、使用する食材、調理方法、加熱温度などによって、発生するにおいの種類や強さは変わります。
そのため、消臭機を選ぶ際には、どのようなにおいが発生しているかを確認することが重要です。
活性炭などを利用する吸着方式では、におい成分を吸着材に取り込んで排気を処理します。ただし、吸着材には処理できる量に限界があるため、使用状況に応じた交換が必要です。
また、油煙が多い排気をそのまま消臭機に通すと、吸着材や内部部品に油が付着し、本来の脱臭性能を発揮しにくくなることがあります。そのため、消臭機の前段で油煙や粒子を取り除くことが重要です。
排煙集塵機と消臭機の大きな違い
排煙集塵機と消臭機の違いは、主に処理する対象にあります。
排煙集塵機は、煙、すす、油滴、粉じんなどの粒子状物質を捕集します。消臭機は、空気中に含まれるガス状のにおい成分を吸着または分解します。
簡単に整理すると、排煙集塵機は「目に見える煙や油分への対策」、消臭機は「鼻で感じるにおいへの対策」と考えると分かりやすいでしょう。
ただし、実際の厨房排気には、煙、油分、すす、におい成分が同時に含まれています。そのため、どちらか一方を設置するだけでは、店舗が抱えている排気問題を十分に解決できないことがあります。
排煙集塵機だけではにおいが残る場合がある
排煙集塵機を設置すると、目に見える煙や排気口周辺の油汚れが減少することがあります。しかし、煙が減ったからといって、においも同じ割合で減少するとは限りません。
集塵機が捕集するのは主に粒子状物質です。においの原因となるガス状成分は、集塵機を通過することがあります。
一方で、煙や油の粒子自体がにおいを伴っている場合は、集塵によってにおいが一定程度軽減されることもあります。しかし、調理臭全体を処理するには、消臭機による対策が必要になる場合があります。
排気口から目立った煙は出ていないものの、近隣からにおいについて指摘を受ける場合は、集塵対策だけでなく消臭対策も確認する必要があります。
消臭機だけでは油煙による負担が大きくなる
におい対策を目的として消臭機を設置する場合でも、油煙やすすが多い排気を直接処理することは適切ではない場合があります。
油分を多く含む排気が消臭機に入ると、吸着材やフィルターの表面が油で覆われ、におい成分を処理する能力が低下しやすくなります。また、内部の汚れが進み、清掃や部品交換の頻度が高くなることも考えられます。
そのため、油煙を多く発生する厨房では、最初にグリスフィルターや集塵機などで油分や粒子を取り除き、その後に消臭機でにおい成分を処理する構成が一般的です。
環境省の臭気対策資料でも、電気集塵機と活性炭脱臭装置を組み合わせる構成が紹介されています。

排煙集塵機と消臭機を併用する理由
厨房排気には、粒子状物質とガス状のにおい成分が混在しています。そのため、煙・油・においを総合的に処理するには、排煙集塵機と消臭機を組み合わせる方法があります。
一般的には、排気の流れの前段に集塵設備を設置し、後段に消臭設備を設置します。
最初に集塵機で煙、すす、油の微粒子を捕集することで、後段の消臭機への油汚れの流入を抑えます。その後、消臭機でガス状のにおい成分を処理します。
このように処理対象ごとに設備の役割を分けることで、それぞれの装置が本来の性能を発揮しやすくなります。また、消臭材やフィルターの負担を軽減し、維持管理を行いやすくすることにもつながります。
どちらの設備が必要か判断する方法
設備を選定する際は、現在発生している問題を具体的に整理することが重要です。
排気口から白煙や黒煙が見える、外壁や屋根に油汚れが付着している、ダクト内部に油がたまりやすいといった場合は、集塵対策を検討します。
一方、煙は目立たないものの、周辺に調理臭が広がっている、近隣からにおいについて意見が寄せられているといった場合は、消臭対策を確認します。
煙とにおいの両方に問題がある場合は、排煙集塵機と消臭機の併用を検討します。
ただし、必要な設備は、業態、調理方法、客席数、厨房機器の台数、排気風量、ダクトの長さ、排気口の位置、周辺環境などによって異なります。設備単体だけでなく、排気経路全体を確認したうえで判断することが大切です。
排気風量との適合も重要
排煙集塵機や消臭機は、設置すれば必ず十分な効果が得られるものではありません。厨房から排出される空気量に対して、装置の処理能力が適合している必要があります。
処理能力が不足していると、排気の一部が十分に処理されない可能性があります。反対に、装置の抵抗が大きすぎると、排気風量が低下し、煙が店内に漏れやすくなることがあります。
そのため、設備を選ぶ際には、処理風量だけでなく、圧力損失、既存ファンの能力、ダクトの太さや長さなども確認します。
排気設備は、集塵機や消臭機だけで完結するものではありません。フード、ダクト、排気ファン、給気設備を含めた全体のバランスが重要です。
定期的な清掃と交換が必要
排煙集塵機と消臭機は、どちらも定期的な維持管理が必要です。
集塵機には油やすすが蓄積するため、フィルターや集塵部の清掃を行います。汚れを放置すると、集塵性能の低下、排気抵抗の増加、排気風量の低下につながることがあります。
消臭機では、フィルターや吸着材の交換が必要です。吸着材がにおい成分を保持できる量には限界があり、交換時期を過ぎると脱臭性能が低下します。
清掃や交換の頻度は、営業時間、調理量、食材、油の使用量などによって変わります。決められた期間だけで判断せず、汚れやにおいの状態を定期的に確認することが大切です。
排煙集塵機と消臭機は、どちらも厨房排気の改善に使用されますが、処理する対象が異なります。
排煙集塵機は、煙、すす、油の微粒子などを捕集する設備です。消臭機は、排気に含まれるガス状のにおい成分を低減する設備です。
煙への対策とにおいへの対策は同じではありません。油煙を多く含む厨房では、集塵機で粒子を処理した後、消臭機でにおいを処理する構成が適しています。
設備を検討する際は、目に見える煙だけでなく、油汚れ、におい、排気風量、排気口の位置、周辺環境などを総合的に確認する必要があります。
また、設備導入後も、集塵部の清掃や消臭材の交換を継続することが重要です。店舗の調理内容と排気条件に合った設備を選び、適切に維持管理することで、店内と店舗周辺の環境改善につながります。
排煙集塵機・消臭機の選定や厨房排気の改善については、株式会社野田ハッピーのお問合せフォームよりご相談ください。

