
焼肉店では、一般的な飲食店と比べて客席で煙や油煙、熱、においが発生しやすいため、換気設備は店舗環境を維持するうえで重要な設備です。
しかし、換気扇の能力を大きくすれば必ず快適になるというものではありません。排気量に対して十分な給気が確保されているか、ロースター周辺で煙を適切に捕集できているか、ダクトやフィルターによる圧力損失が大きくなっていないかなど、設備全体のバランスを考える必要があります。
今回は、焼肉店の換気設備を計画する際に知っておきたい「風量」の基本的な考え方について分かりやすく説明します。
1.換気設備の「風量」とは
換気設備における風量とは、一定時間内にどの程度の空気を移動させることができるかを表す数値です。
業務用の換気設備では一般的に「m³/h(立方メートル毎時)」という単位が使用されます。
たとえば1,000m³/hであれば、理論上は1時間に1,000m³の空気を移動させる能力を表します。
ただし、換気ファンに表示されている風量が、そのまま店舗で得られる実際の排気量になるとは限りません。
換気設備にはダクト、曲がり部分、フィルター、排気フードなどがあり、空気が通過するときに抵抗が発生します。国土交通省の換気設備に関する基準でも、換気設備の能力についてはダクトなどに生じる圧力損失を考慮して確認する考え方が示されています。
そのため、換気設備を検討するときは「ファンのカタログ風量」だけで判断するのではなく、実際の設備構成を含めて考えることが大切です。
2.焼肉店では客席の排気を考える必要がある
一般的な厨房では、コンロやフライヤーなど調理設備の上部に排気フードを設置し、調理によって発生する熱、水蒸気、油煙などを捕集して排気します。
焼肉店の場合はこれに加えて、客席の各テーブルにロースターが設置されている店舗が多くあります。
つまり、厨房だけではなく客席そのものが調理スペースになる点が特徴です。
肉を焼くと、煙だけでなく油分を含んだ空気や熱が発生します。そのため、それぞれのロースターから発生する空気を適切に捕集して屋外へ排出する設備が必要になります。
店舗全体の換気量だけを確認するのではなく、
・ロースターの台数
・各ロースターの排気量
・厨房の排気量
・店舗全体の換気量
・給気量
などを総合的に確認することが重要です。
3.必要風量を考える基本は「発生源を捕集すること」
焼肉店の換気設備では、「店内の空気を何回入れ替えるか」という考え方だけでは十分とはいえません。
特に重要なのが、煙や油煙が店内に広がる前に発生源の近くで捕集することです。
焼肉店で使用される排煙設備には、テーブル下部から煙を吸い込む方式や、上部のフードから吸い込む方式などがあります。
いずれの場合でも、ロースターから発生した煙をできるだけ周囲へ拡散させず、排気設備へ誘導できる状態をつくることが基本になります。
必要な排気風量はロースターの構造、火力、排気方式、フード形状などによって異なるため、「焼肉店なら1台につき必ず○m³/h」というように一律に決めることは適切ではありません。
設備の仕様や店舗条件を確認したうえで設計する必要があります。
4.店舗容積と換気回数から考える方法
換気設備の風量を考える方法の一つに「換気回数」があります。
換気回数とは、その室内の空気を1時間に何回入れ替えるかを示す考え方です。
基本的には、
室内の容積 × 1時間あたりの換気回数
によって必要な換気量を考えます。
たとえば、床面積と天井高さから室内の容積を求め、その空間を1時間に何回換気する必要があるかを想定して風量を算出します。
厨房換気の設計では、換気回数、排気フードの面風速、燃焼設備の燃料消費量など複数の条件から換気量を検討する方法があります。
ただし焼肉店の場合、店舗容積だけで計算すると、各ロースターから発生する煙や油煙の捕集に必要な排気量を十分に評価できない場合があります。
そのため、換気回数は一つの確認方法として利用しながら、ロースターや厨房設備の排気条件も確認する必要があります。
5.ロースター台数が増えると排気量も増える
焼肉店の換気設備を考える際、特に確認したいのがロースターの台数です。
たとえば各ロースターに排気設備が接続されている場合、基本的には各設備の排気量を合計して店舗の排気系統を検討します。
席数が増えればロースター数も増えるため、それに伴って必要となる排気量が大きくなる可能性があります。
ここで注意したいのは、排気ファンだけを大きくすればよいわけではないという点です。
ロースターからファンまでのダクト径、ダクト長、分岐数、曲がりの数、フィルターや集塵設備の有無などによって空気抵抗が変わります。
そのため、同じ台数のロースターを設置している店舗でも、ダクトの構成によって必要となるファンの能力が異なる場合があります。
6.排気量だけでなく「給気量」が重要
換気設備を考えるときに見落とされやすいのが給気です。
排気とは店内の空気を外へ出すことであり、給気とは外から新しい空気を取り入れることです。
大量に排気しているのに十分な給気がなければ、店舗内部が強い負圧状態になることがあります。
その結果、
・入口ドアが開けにくくなる
・ドア付近から強く外気が入り込む
・厨房や客席の気流が乱れる
・排気フードの捕集状態に影響する
といった問題につながることがあります。
換気設備に関する国の基準でも、給気口と排気口の配置について、室内の空気分布を考慮し、著しく局部的な気流が生じないようにする考え方が示されています。
したがって焼肉店では、「どれだけ排気するか」と同時に「どこから、どれだけ給気するか」を考えることが重要です。
7.給気の位置によって煙の流れが変わる
必要な給気量を確保していても、給気口の位置が適切でなければ換気がうまく機能しないことがあります。
たとえばロースターと排気口の間を横切るように強い空気が流れると、上昇している煙が横方向へ流される場合があります。
その結果、本来排気設備へ入るはずだった煙が客席側へ広がることがあります。
焼肉店では、
給気口
↓
客席
↓
ロースター周辺
↓
排気設備
↓
排気ダクト
↓
屋外
という空気の流れを意識して設備を配置することが大切です。
給気口の位置や吹き出し方向まで含めて計画することで、排気設備の能力を生かしやすくなります。
8.ダクトの太さも風量に関係する
換気ファンの能力だけでなく、ダクトのサイズも実際の風量に大きく関係します。
必要な空気量に対してダクトが細すぎると、内部の風速が高くなり、圧力損失や騒音などが増える原因になります。
また、ダクトが長い場合や曲がりが多い場合も圧力損失が増加します。
焼肉店では複数のテーブルからダクトを接続し、途中で合流させて一つの排気ファンへつなぐ構成もあります。
この場合、
・各枝ダクトの風量
・合流後の風量
・ダクト径
・曲がり部分
・排気ファンまでの距離
などを考慮してダクトを設計する必要があります。
9.油汚れによって実際の風量が低下することもある
換気設備は設置したときの状態が永久に維持されるわけではありません。
焼肉店の排気には油分が含まれているため、使用を続けることでフィルター、フード、ダクト、ファンなどに油汚れが付着することがあります。
フィルターが目詰まりしたり、ダクト内部に汚れが蓄積したりすると空気抵抗が増え、設備本来の排気性能を十分に発揮できなくなる可能性があります。
そのため、
「以前より煙が残るようになった」
「客席ににおいが広がりやすくなった」
「排気が弱く感じる」
といった変化がある場合は、ファンの能力不足だけではなく、排気経路の汚れや詰まりについても確認する必要があります。
10.集塵機や消臭設備を設置する場合も圧力損失を確認する
焼肉店では、店舗の立地や排気条件によって、排気経路に集塵設備や消臭設備を設置する場合があります。
これらの設備を追加すると、排気される空気が装置内部を通過するため、新たな空気抵抗が発生します。
そのため、既存の排気設備へ後から集塵設備や消臭設備を追加するときは、現在のファン能力で必要な風量を確保できるか確認することが重要です。
機器を設置することだけを考えるのではなく、
ロースター
↓
排気ダクト
↓
集塵・消臭設備
↓
排気ファン
↓
屋外
という排気経路全体で風量と圧力損失を確認する必要があります。
11.店舗ごとに必要な風量が違う理由
焼肉店に必要な換気量は、店舗によって異なります。
主な条件として、
・店舗面積
・天井高さ
・客席数
・ロースター台数
・ロースターの排気方式
・厨房設備
・ダクトの長さ
・ダクト径
・ダクトの曲がりや分岐
・給気設備
・排気ファン
・集塵設備
・消臭設備
・建物の構造
・排気口の位置
などがあります。
そのため、単純に店舗面積だけを見て換気ファンを選定することはおすすめできません。
特に既存店舗の換気設備を改修するときは、排気ファンだけではなく、ダクトや給気設備を含めた現在の換気システム全体を確認することが重要です。
12.換気設備を見直すときの確認ポイント
焼肉店の換気設備について問題を感じた場合は、次の項目を順番に確認すると状況を整理しやすくなります。
・各ロースターで煙を十分に吸引できているか
・厨房排気が正常に機能しているか
・必要な給気が確保されているか
・給気によって煙の流れが乱れていないか
・フィルターに油汚れが蓄積していないか
・ダクト内部に汚れや閉塞がないか
・排気ファンが正常に作動しているか
・ダクトの径や経路が風量に適しているか
・集塵設備や消臭設備による圧力損失が大きくなっていないか
・屋外の排気口周辺に問題がないか
これらを総合的に確認することで、単なるファンの交換だけでは分からなかった原因が見つかる場合があります。
焼肉店の換気設備に必要な風量は、店舗面積だけで決められるものではありません。
客席のロースター数、厨房設備、排気方式、ダクトの構成、給気量、集塵設備や消臭設備など、複数の条件を考慮して決める必要があります。
特に重要なのは、単純に大きな排気ファンを設置することではなく、発生した煙や油煙を適切に捕集し、その排気量に見合った給気を確保することです。
また、設備を長期間使用している店舗では、油汚れやフィルターの目詰まり、ダクト内部の汚れなどによって実際の風量が低下している可能性もあります。
煙やにおいが以前より残るようになった場合には、排気ファンだけを確認するのではなく、給気、ダクト、ロースター、排気設備まで含めて換気システム全体を確認することが大切です。
焼肉店の換気・排煙設備、ダクト、集塵・消臭設備についてお困りの際は、株式会社野田ハッピーのお問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。

