
飲食店の厨房では、調理によって油を含んだ煙や蒸気が発生します。グリスフィルターは、こうした排気に含まれる油脂分を捕集し、排気ダクトや排気ファンへの油汚れの流入を抑えるための設備です。
日常的に使用される設備ですが、「どのくらいの頻度で清掃すればよいのか」「何年使用したら交換すべきなのか」が分かりにくいこともあります。
グリスフィルターの汚れ方は、調理内容や営業時間、油を使用する量などによって大きく異なるため、単純に使用年数だけで管理することは適切ではありません。
今回は、飲食店におけるグリスフィルターの役割を確認しながら、清掃頻度の考え方、交換を検討するタイミング、日常点検のポイントについて分かりやすく解説します。
グリスフィルターとは
グリスフィルターは、厨房の排気フードなどに取り付けられ、調理中に発生する油脂分を捕集するための設備です。
厨房から吸い込まれた空気には、煙だけでなく細かな油の粒子が含まれています。そのまま排気ダクトへ流れると、油脂がダクトや排気ファンの内部に付着していきます。
グリスフィルターを設けることで、その油脂分の一部を排気設備の入口付近で捕集し、ダクト内部などへの油の蓄積を抑えます。
消防関係の資料でも、グリスフィルターについて、油塵による目詰まり、変形、損傷、腐食などがないか確認することが点検項目として示されています。
ただし、グリスフィルターが設置されていれば、ダクト内部がまったく汚れないわけではありません。フィルターを通過した油脂や汚れは徐々に内部へ付着するため、フード、フィルター、ダクト、排気ファンを含めた排気設備全体の維持管理が必要です。
グリスフィルターを清掃しないとどうなるのか
グリスフィルターは使用するほど表面や内部に油脂が付着します。
油汚れが蓄積すると空気が通る部分が狭くなり、目詰まりにつながります。消防庁も、グリスフィルターの目詰まりなどによる換気不良に注意し、厨房設備の清掃・メンテナンスを行うよう案内しています。
また、フィルターだけでなく、その周辺や排気ダクト内に油脂が蓄積した状態は火災予防の面でも好ましくありません。
実際に自治体の消防関連情報でも、ダクト内部に付着した油かすなどが火災につながる可能性があるとして、フードやグリスフィルターなどの定期的な点検・清掃が案内されています。
そのため、汚れてから清掃するというより、汚れが蓄積しすぎない状態を維持することが基本になります。
グリスフィルターの清掃頻度はどのくらい?
グリスフィルターの適切な清掃頻度は、すべての飲食店で同じではありません。
油煙の発生量が多い厨房と、比較的油を使わない厨房では、当然ながら汚れる速度が異なります。
目安を考える際には、次のような条件を確認します。
・揚げ物や炒め物を多く調理している
・焼肉や焼鳥など油煙が発生しやすい調理を行っている
・営業時間が長い
・1日の調理量が多い
・フィルター表面に油が早く付着する
・以前より排気が弱く感じられる
こうした厨房では、短い間隔で状態を確認する必要があります。
横浜市が公開している飲食店向けの火災予防情報では、グリスフィルターについて「1週間に1回以上」の点検、「1か月に1回以上」の清掃という管理例が示されています。
ただし、これはあらゆる店舗に共通する絶対的な交換・清掃周期という意味ではありません。実際の油脂の付着状況を確認し、必要であればさらに短い間隔で清掃することが重要です。
特に油を多く使用する店舗では、「毎月決まった日に確認する」だけではなく、営業中や営業終了後の日常点検でフィルターの状態を見る習慣をつけると管理しやすくなります。
清掃時期は見た目でも判断する
清掃スケジュールを決めることは大切ですが、日付だけに頼らず、実際の状態を確認することも必要です。
たとえば、次のような状態が確認できる場合には清掃を検討します。
・フィルター表面に油が目立って付着している
・フィルターの隙間に油汚れが詰まっている
・油が垂れている
・触ると厚い油汚れが付着している
・排気の吸い込みが以前より弱く感じられる
・フード内部への油汚れが増えている
特に「まだ空気が吸えているから問題ない」と判断するのは避けたほうがよいでしょう。
油脂は徐々に蓄積するため、毎日見ていると変化に気づきにくい場合があります。清掃日や点検日を記録しておくと、店舗ごとの適切な清掃周期を把握しやすくなります。
グリスフィルターの清掃方法
取り外し可能な金属製グリスフィルターの場合、一般的にはフィルターを取り外し、付着した油脂を除去します。
ただし、フィルターの材質や構造によって使用できる洗剤や洗浄方法が異なるため、設備の取扱説明書やメーカー指定の方法を確認することが基本です。
清掃後は、油汚れだけでなく次の点も確認します。
・変形していないか
・金属部分が腐食していないか
・破損している部分がないか
・フィルターが正しい位置に取り付けられるか
・油の回収部分に異常がないか
東京消防庁の点検資料でも、グリスフィルターについて、目詰まりだけでなく変形、損傷、腐食などの確認が示されています。
また、取り外して清掃する構造の場合、清掃中にも厨房を使用する店舗では予備フィルターを用意して交互に使用する方法もあります。グリスフィルターを容易に取り外して清掃できる構造とし、必要な予備品を備える考え方を示している消防関係の基準もあります。
グリスフィルターは何年で交換する?
グリスフィルターには、すべての店舗に共通する「○年で必ず交換」という期間を設定することは難しいものです。
交換時期は使用年数だけでなく、フィルターの状態を見て判断します。
定期的な清掃によって正常な状態を維持できている金属製フィルターであれば、一定期間使用したからという理由だけで直ちに交換する必要があるとは限りません。
一方、次のような状態が見られる場合には交換を検討します。
交換を検討したい主な状態
1.変形している
清掃や取り外しを繰り返したことでフレームなどが変形すると、正しい位置に取り付けられなくなる場合があります。
フィルターとフードの間に隙間が生じれば、油を含んだ排気がフィルターを十分に通らず、周辺やダクト側へ流れる可能性があります。
2.破損している
フィルターの一部が割れている、外れている、構造が崩れているといった場合には、そのまま使用を続けず状態を確認する必要があります。
破損した部分から油煙が通過しやすくなるためです。
3.腐食が進んでいる
長期間使用していると、材質や使用環境によっては腐食が発生することがあります。
軽微な変色だけで直ちに交換が必要とは限りませんが、強度が低下している場合や穴が開いている場合などは交換を検討します。
4.清掃しても汚れや目詰まりが十分に取れない
長期間蓄積した油脂が内部に固着すると、通常の清掃だけでは十分に除去できないことがあります。
清掃後にも空気の通りが悪い状態が残っている場合には、洗浄方法の見直しやフィルターの交換を検討します。
5.正しく取り付けられなくなった
グリスフィルターは、所定の位置に正しく取り付けられていることが重要です。
フレームのゆがみなどによって固定できない、隙間が生じるといった場合には、使用を続けず点検することが適切です。
フィルターだけでなく周辺設備も確認する
グリスフィルターを定期的に清掃していても、排気設備全体のメンテナンスが不要になるわけではありません。
フード内部、油受け、防火ダンパー、排気ダクト、排気ファンなどにも油脂は徐々に付着します。
特にダクトや排気ファンは日常的に内部を確認しにくいため、フィルターだけを見て設備全体がきれいだと判断しないことが重要です。
近年の消防関係の検討資料でも、グリス除去装置が設置されていても、適切な清掃が行われていない場合に火災が発生していることが指摘されています。
フィルターの汚れが以前より早くなった、排気が弱くなった、フード内部の油汚れが増えたといった変化がある場合には、フィルター以外の部分も含めて確認する必要があります。
店舗ごとの清掃周期を決めて管理する
グリスフィルターの管理では、「一般的な頻度」だけでなく、自店でどのくらいの期間で汚れるのかを把握することが重要です。
たとえば、最初は短い間隔で点検し、
「1週間でどの程度油が付着するか」
「2週間ではどうか」
「1か月経過するとどの程度目詰まりするか」
といった状態を記録します。
その結果から、その店舗に適した点検・清掃周期を設定すると管理しやすくなります。
厨房設備は、調理内容や営業時間の変更によって汚れ方が変わる場合もあります。メニュー変更や営業時間延長などがあった場合には、それまでの清掃周期が適切か改めて確認するとよいでしょう。
日常清掃と専門的なメンテナンスを分けて考える
グリスフィルターの取り外しや洗浄など、店舗スタッフが日常的に対応できる部分もあります。
一方で、排気ダクト内部や排気ファンなどは、設置場所や構造によって店舗側で十分な清掃が難しい場合があります。
そのため、
日常的な目視確認
定期的なグリスフィルター清掃
フード周辺の清掃
排気ダクトやファンの状態確認
というように、作業内容を分けて管理すると分かりやすくなります。
定期点検によって油脂の蓄積状態を把握し、必要な部分を必要なタイミングで清掃することが、排気設備を適切な状態に保つ基本となります。
グリスフィルターは、厨房から発生する油脂分を捕集し、排気ダクトや排気ファンへの油汚れの流入を抑える重要な設備です。
清掃頻度は店舗によって異なりますが、定期的にフィルターを確認し、油汚れや目詰まりが進む前に清掃することが基本です。
また、交換時期についても単純な使用年数だけで判断するのではなく、変形、破損、腐食、清掃後の目詰まり、取り付け状態などを確認して判断することが適切です。
グリスフィルターだけでなく、フード、ダクト、排気ファンなどを含めて排気設備全体を確認することで、厨房環境を安定して維持しやすくなります。
店舗ごとの調理内容や油煙量に合わせて点検・清掃周期を決め、継続的に状態を確認していくことが大切です。
厨房のグリスフィルターや排気ダクト、排気設備の点検・清掃についてお困りの場合は、株式会社野田ハッピーのお問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。

