焼肉店のダクト火災を防ぐ点検・清掃チェックリスト|無煙ロースターと排気設備の管理方法

焼肉店では、客席のロースターから出る煙や油を含んだ空気を、排気設備で屋外へ運びます。普段は見えないダクトの内部にも汚れが付着するため、ロースターの周囲だけを清掃していても、排気経路全体を管理できているとは限りません。

東京消防庁は、焼肉店の無煙ロースターで調理中、火のついた油などが排気ダクトに吸い込まれ、内部に堆積した油かすに着火した事例を公表しています。上方へ煙を吸い込む方式だけでなく、テーブルの下方へ吸い込む方式でも事例があります。店舗の設備に合わせて、どこを従業員が確認し、どこを専門業者に点検・清掃してもらうか決めておくことが大切です。

この記事では、焼肉店の運営者が日々の業務に取り入れやすいよう、排気設備の確認事項を順番に整理します。

まず、店舗の排気経路を把握する

点検を始める前に、客席と厨房の排気経路を確認しましょう。焼肉店には、テーブル上方の吸込口から煙を集める設備や、ロースターの周囲・下方から煙を吸い込む設備があります。厨房のレンジフードが別の経路につながっている店舗もあります。

設備図面や取扱説明書を見ながら、吸込口、グリス除去装置、ダクト、排気ファン、点検口の位置を確認します。防火ダンパーや自動消火装置が設けられている場合は、その位置も記録します。客席ごとに排気経路が分かれているのか、途中で合流しているのかも、清掃範囲を決める際に役立ちます。

設置時の図面が見つからない場合や、点検口から確認できる範囲が分からない場合は、設備業者に現状を調べてもらいましょう。見える部分だけを清掃して、奥のダクトや排気ファンを長期間確認していない状態を避けるためです。

1.吸込口とロースター周辺の油汚れを確認する

営業中は、肉から出た油や、火のついた油が排気口へ向かうことがあります。東京消防庁が公表した焼肉店の火災事例にも、火のついた油がダクトに吸い込まれ、内部の油かすに着火したものがあります。吸込口の周辺は、客席清掃の際に状態を確認しやすい場所です。

営業終了後など、機器が冷めて安全に作業できるときに、吸込口の縁や取り外し可能な部品に油汚れが残っていないか確認します。油が垂れている、取り外した部品の奥にも汚れが続いている、といった場合は、表面だけで清掃を終えず、設備に応じた点検範囲を確認してください。

上引き排気ダクトについては、総務省消防庁が2026年に示した通知で、設備の構成に応じた点検・清掃の方法が示されています。グリス除去装置と火炎伝送防止装置が所定の位置にある場合、排気取入口からグリス除去装置までの部分などは、営業日ごとの点検・清掃の対象とされています。通知は各消防機関への技術的な助言です。店舗に適用される具体的な扱いは、所轄消防署や設備業者に確認しましょう。

2.グリスフィルターは「付いているか」だけでなく、状態を見る

グリスフィルターなどのグリス除去装置は、排気に含まれる油分を捕集するための設備です。ただし、油汚れによる目詰まり、変形、破損があれば、設置されているだけでは十分に役割を果たせません。

点検では、フィルター表面の汚れに加え、取り付け位置が正しいか、すき間ができていないかを確認します。清掃後に十分乾燥させ、元の位置へ戻すことも必要です。清掃できる部品なのか、交換が必要な部品なのかは設備によって異なるため、取扱説明書に沿って判断してください。東京消防庁のガイドラインも、目詰まり、損傷、取り付け状態を確認項目に挙げています。

客席のロースターと厨房のレンジフードでは、フィルターの構造や取り外し方が異なる場合があります。従業員が担当する範囲を決める際は、機器ごとの手順を明確にしておくと、清掃後の取り付け忘れも確認しやすくなります。

3.ダクト内部は、見えない範囲まで点検する

ダクトは金属製でも、内部に付着した油脂などが火の広がる経路になることがあります。東京消防庁のガイドラインは、清掃時期を判断するため、店舗の使用状況に応じた点検を勧めています。外から見えにくい部分には、点検口からの確認が必要です。

東京消防庁が調べた、2015年から2018年までの焼肉店の上引きダクト火災45件では、グリスフィルターより先のダクト部分について、「清掃していない」とされた店舗が24件ありました。この数字だけで各火災の原因を断定することはできませんが、吸込口の奥まで管理対象に含める必要性を考える資料になります。

清掃頻度を「全店舗で月1回」のように一律に決めることは適切ではありません。調理量、使用時間、排気方式、グリス除去装置の有無によって汚れ方が変わります。点検口から内部を確認した結果を記録し、油の付着状況に応じて次回の点検・清掃時期を決めましょう。

なお、2026年の消防庁通知では、上引き排気ダクトについて、設備構成ごとに営業日ごと、約1か月ごと、約6か月ごとの点検対象範囲が示されています。これは、すべてのダクトを同じ間隔で全面清掃するという意味ではありません。自店の設備がどの構成に当たるか確認したうえで運用してください。

4.防火ダンパーと自動消火装置の管理方法を確認する

防火ダンパーは、火炎が排気経路へ広がることを抑えるための装置です。油汚れや腐食などで動きが妨げられていないか、点検が必要です。東京消防庁のガイドラインには、羽根や温度ヒューズ部の汚れ、変形、作動状態などが確認項目として示されています。

ただし、従業員が独自の判断で取り外したり、手動で作動させたりする運用は避けましょう。設備の構造と取扱説明書を確認し、必要な点検は対応できる業者へ依頼します。点検後は、指摘された不具合と対応結果を記録しておくと、次回の確認につながります。

自動消火装置が設置されている店舗では、感知部や薬剤放出口に油汚れ、損傷、ふさがれた箇所がないかも確認対象です。一方、元の記事にある「ダクト内に自動消火装置やスプリンクラーを設置する」という提案を、すべての焼肉店に共通する対策として扱うことはできません。必要な設備や点検方法は建物と排気設備の条件によって異なるため、所轄消防署と設備業者に確認してください。

5.排気ファンの音、振動、換気状態を確認する

排気ファンも清掃・点検の対象です。東京消防庁のガイドラインでは、ファンの羽根車や周辺の油汚れ、部品の損傷、運転音や振動の異常などを確認項目に挙げています。グリスフィルターの目詰まりや換気扇の故障は、換気不良にもつながります。

開店前の試運転時に、いつもと違う音や強い振動がないか確認しましょう。営業中に煙の吸い込みが普段より弱い、客席に煙が滞留するなどの変化があれば、その状況を記録して点検を依頼します。異臭だけで原因を特定することはできませんが、焦げたようなにおいを伴うなど異常を感じた場合は、機器の使用を続けず、安全を確認してください。

ガスや炭を使う設備では、換気不良は火災予防とは別の安全上の問題にも関わります。排気ファンだけでなく、給気が確保されているかも含めて確認することが大切です。

6.従業員とお客様への伝え方を決める

設備を清掃していても、営業中の火の扱いに注意が必要です。消防庁は上引き排気ダクトへの火炎の流入を防ぐため、一度に多量の食材を調理しないことなどを、飲食店から利用客へ注意喚起するよう示しています。

従業員には、炎が大きくなったときの対応、ロースターの停止方法、消火器の場所、119番通報とお客様の避難誘導について、店舗の設備に合わせて共有しておきましょう。お客様には、焼き過ぎによる炎の立ち上がりなど、調理中に注意してほしいことを簡潔に伝えます。

火災が起きた場合、従業員が危険な場所にとどまって対応することは避けなければなりません。通報、初期消火、避難誘導を誰が担うか、勤務人数が少ない時間帯も含めて確認しておくと、訓練を具体的に行えます。消防庁と各消防機関は、消火器などの消防用設備について、法令に基づく定期的な点検・報告も案内しています。

7.点検・清掃の記録を残す

点検表には、確認した日付、担当者、設備の場所、汚れや異常の有無、清掃・修理の内容を残します。客席が複数ある場合は、「客席のロースター」だけでは場所を特定しにくいため、席番号や排気系統を記載すると役立ちます。

専門業者に依頼した際は、作業報告書で実際に確認・清掃した範囲を確認しましょう。「ダクト清掃」と記載されていても、吸込口付近、点検口から届く範囲、排気ファンまでの経路など、作業範囲は契約によって異なります。清掃前後の写真や、未点検箇所の説明があれば、次回の計画を立てやすくなります。

焼肉店で使える日常チェックリスト

営業前後の確認事項を、店舗の設備に合わせて点検表にまとめておきましょう。

  • 吸込口やロースター周辺に、目立つ油汚れや油だれはないか
  • 取り外して清掃する部品は、正しい位置に戻っているか
  • グリスフィルターに目詰まり、変形、破損はないか
  • 排気ファンに普段と違う音や振動はないか
  • 客席や厨房で、煙の吸い込みが普段より弱くなっていないか
  • 点検口から確認するダクト内部の点検予定日は決まっているか
  • 防火ダンパーなどの点検記録と、不具合への対応記録は残っているか
  • 従業員は消火器の位置、通報方法、お客様の避難誘導を理解しているか

このチェックリストだけでダクト内部の状態を判断することはできません。従業員による日常確認と、設備の構造に応じた内部点検・清掃を組み合わせて使ってください。


焼肉店のダクト火災対策では、吸込口やフィルターなど毎日見える場所と、点検口から確認するダクト内部の両方を管理することが重要です。まずは店舗の排気経路を把握し、従業員が行う清掃、専門業者に依頼する点検、それぞれの範囲と記録方法を決めましょう。

設備図面がない、ダクト内部の点検方法が分からない、清掃範囲を見直したいといった場合は、現在の設備構成を確認したうえで、所轄消防署や設備業者に相談してください。

参考資料

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