
飲食店のリフォームを考えるとき、壁や床の色、照明、家具など、目に見える部分から検討することが多いのではないでしょうか。店内の雰囲気を整えることは大切ですが、毎日の営業を支える換気設備や厨房の配置、清掃のしやすさも、改装時に確認したい要素です。
焼肉店では客席の煙、焼鳥店では焼き場の排気、ラーメン店では厨房の熱と湯気、韓定食店では複数の料理を盛り付けて運ぶ動線など、業態によって課題は異なります。ほかの店舗で使いやすい設備や配置が、そのまま自店に合うとは限りません。
最近の施工業界では、工事に必要な労務費の確保や適正な工期、改修前の調査が重視されています。こうした動きを踏まえ、飲食店の店長がリフォーム前に整理しておきたいポイントをご紹介します。
1.最新の資材動向を踏まえ、見積もりの条件を確認する
2026年9月に公表された主要建設資材の調査では、調査対象となる資材の価格動向は横ばい、需給動向は均衡とされています。施工に使う資材がすべて値上がりしている、あるいは一律に不足しているという状況ではありません。
ただし、この調査結果だけで、店舗リフォームに使う内装材や厨房設備の価格、納期まで判断することはできません。採用する材料、設備の仕様、工事場所の条件によって、見積もりや工程は変わります。
見積もりを確認する際は、総額とともに、解体、内装、給排水、電気、ガス、換気設備などの工事範囲を確認しましょう。既存設備を再利用する部分と交換する部分、処分や清掃の範囲、試運転が含まれているかを把握すると、施工内容を比較しやすくなります。
また、見積もりの有効期限と、設備を発注する時期も確認しておきたい項目です。工事内容が固まっていない段階で営業再開日だけを決めると、後から仕様の変更が難しくなることがあります。材料と設備の手配状況を確認したうえで、休業期間を計画することが大切です。
2.適正な工期を確保し、営業再開までの工程を共有する
2025年12月に改正建設業法が全面施行され、適正な労務費の確保や、著しく短い工期による契約の防止に関する制度が整備されました。工事を発注する側にも、必要な作業と期間を踏まえた計画が求められます。
飲食店では休業日数を抑えたいという事情があります。しかし、工事には設備の撤去や取り付けだけでなく、下地の補修、材料の乾燥、配管の確認、試運転などの工程があります。工事の種類によって、必要な期間は異なります。
施工会社とは、着工日と完成日だけでなく、設備搬入、配管接続、清掃、試運転、引き渡しの順序まで共有しましょう。賃貸物件では、作業できる時間帯や共用部分の使用条件、搬入経路についても管理者への確認が必要です。
営業再開前には、実際の調理や配膳を想定した確認時間を設けておくと、使い勝手を確かめられます。工事の完成と営業の準備完了を、それぞれ工程に組み込むことがポイントです。
3.小規模な改装でも、石綿の事前調査を確認する
壁や天井を撤去する工事、設備の交換に伴って建材を加工する工事では、石綿、いわゆるアスベストの事前調査が必要となる場合があります。
対象となる解体・改修工事では、規模の大小にかかわらず、工事で手を加える部分の材料について調査することが原則です。行政への結果報告が必要となる工事の条件と、事前調査そのものが必要となる条件は異なります。
「店舗が小さい」「一部分しか直さない」という理由だけで、調査が不要とは判断できません。また、建材の見た目だけで石綿の有無を決めることもできません。
改装を相談するときは、施工会社に調査対象となる部分と、資格要件を満たす調査者の手配を確認しましょう。建物の図面や過去の改修記録があれば、建物の所有者や管理者にも提供を相談してください。
調査や、その結果に応じた対応を着工前の工程に組み込むことが、無理のない工事計画につながります。
4.焼肉店・焼鳥店は、排気設備の清掃まで考えて改装する
焼肉店と焼鳥店では、調理に伴う煙や油を含んだ排気を、どのように捕集して屋外へ排出するかが重要です。客席や焼き場を変更するときは、内装の配置と排気設備の計画を合わせて検討する必要があります。
排気設備では、フードやダクト、ファンの性能に加えて、清掃や点検のしやすさも確認しましょう。厨房の排気設備に付着した油脂は、火災予防の面からも定期的な清掃が必要です。
改装後にダクトが天井や装飾材で覆われ、清掃しにくくなるような計画は避けたいところです。点検口の位置、フィルターを外すためのスペース、清掃時の作業場所を、図面の段階で確認してください。
焼肉店で客席の配置や卓数を変更する場合は、各席の排気設備と配管経路を合わせて確認します。焼鳥店で焼き場を移動する場合は、調理機器とフードの位置関係、周囲の可燃物との距離なども検討事項になります。
さらに、屋外の排気口の位置や、周辺の窓、通路との関係も確認が必要です。店内の煙の問題と、屋外へ排出した後の臭いの問題は、それぞれ検討しましょう。脱臭設備を設ける場合も、排気条件に合うか、維持管理を続けられるかまで確認することが大切です。

5.ラーメン店は、厨房の熱・湯気と作業環境を見直す
ラーメン店では、スープの加熱や麺ゆでなどによって、厨房に熱と湯気が発生します。改装時には、調理設備の配置とともに、排気、給気、空調の計画を確認しましょう。
排気は空気を外へ出す仕組み、給気は外から必要な空気を取り入れる仕組みです。調理設備の変更に合わせて、空気の出入りを検討する必要があります。
厨房が暑いからといって、空調設備の能力だけを大きくすれば解決するとは限りません。熱源の位置、フードによる捕集、給気口と空調の吹き出し位置などを、設備担当者に確認してもらいましょう。
2025年6月からは、一定の暑熱条件で行う作業について、熱中症のおそれがある人を把握する報告体制や、重篤化を防ぐ対応手順の整備・周知が義務付けられています。厨房も、実際の温熱環境と作業時間によっては対象になります。
設備の改修に加えて、従業員が不調を伝える相手、作業を離れる手順、休憩場所なども整理してください。厨房の作業環境と、日々の管理体制を合わせて見直すことが必要です。
6.韓定食店は、盛り付けと配膳、下膳の流れを整理する
韓定食店では、主菜に加えて複数の副菜や汁物を提供することがあります。リフォームを考える際は、実際のメニューに合わせて、器の数と配膳の手順を確認しましょう。
たとえば、盛り付けた料理を一時的に置く場所が足りないと、調理台や通路に器が置かれ、別の作業を妨げることがあります。配膳口までの距離が長ければ、その分、料理を運ぶ移動が必要です。
まずは、仕込み、調理、盛り付け、配膳、下膳、洗浄の順に、人と食器がどこを通るか整理してください。提供前の料理と使用済みの食器が同じ狭い場所に集まらないよう、置き場所と運搬経路を検討します。
器の収納も、使用頻度や大きさに合わせて考えると使いやすくなります。よく使う器を取り出しやすい位置に置けるか、洗浄後の食器を衛生的に保管できるかを確認しましょう。
席数を決める際も、配膳に使う盆や食器を持った状態で通れるかまで確認することが大切です。客席と厨房の両方を見ながら、営業中の動きを図面に反映させてください。
7.省エネは、設備更新と日常の手入れを組み合わせる
店舗の省エネを考えるときは、照明、空調、冷蔵・冷凍設備など、使用時間が長い設備から確認すると整理しやすくなります。
設備を更新する場合は、消費電力とともに、必要な能力、設置条件、手入れのしやすさを比較しましょう。省エネ性能が高い設備でも、店舗の使い方に合わなければ、期待した効果を得られるとは限りません。
冷蔵庫では、扉の開閉や周囲の放熱スペース、空調ではフィルターの清掃や吹き出し口を妨げる配置なども確認事項です。設備交換の前に、現在の設置や運用で改善できる部分がないか調べておくと、工事の優先順位を決めやすくなります。
照明は、客席の雰囲気に加え、厨房の作業面や清掃する場所の見やすさも考えて配置してください。場所ごとに必要な明るさを検討することで、店内の印象と作業のしやすさを両立する計画ができます。
なお、省エネのために必要な厨房換気を減らすことは避けましょう。換気量の調整は、安全性と調理時の排気条件を踏まえて、設備担当者と検討する必要があります。
8.内装材は、清掃と補修のしやすさで選ぶ
飲食店の床や壁には、油、水、調味料などが付着します。内装材を選ぶときは、色や質感に加えて、汚れの落としやすさ、水や洗剤への適性、傷んだ際の補修方法を確認しましょう。
厨房では、調理機器の下や壁際、排水まわりに清掃の手が届くかが大切です。床材だけを新しくしても、設備の隙間や排水の問題が残っていれば、日常の清掃はしにくいままです。
客席では、椅子やテーブルを動かして清掃できるか、荷物置きが通路をふさがないかも確認してください。焼肉店や焼鳥店では、油を含む汚れを想定して、家具や仕上げ材の手入れ方法を確認しておくと安心です。
手洗い設備や洗浄設備を含む厨房の変更については、設計段階で管轄の保健所へ相談しましょう。調理機器や火気設備、避難経路に関係する変更は、消防署への確認も必要です。工事を終えてから修正することにならないよう、計画中に相談を進めてください。
9.リフォーム前に、営業中の困りごとを記録する
施工会社へ相談する前に、自店の課題を短い言葉でまとめておきましょう。
「満席時に煙が残る」「焼き場の前が暑い」「盛り付けた料理を置く場所がない」「下膳と配膳が重なる」「閉店後の清掃で手が届かない場所がある」といった、営業中に確認できる事実が役立ちます。
発生する時間帯、場所、使用している設備、従業員の人数なども添えると、状況を伝えやすくなります。可能であれば、現在の図面や設備の仕様、写真も用意してください。
そのうえで、安全と設備の不具合、作業と清掃のしやすさ、客席の使い勝手、内装の雰囲気など、改善したい項目に優先順位を付けます。必ず対応したい部分と、予算や工程に応じて検討する部分を分けておくと、打ち合わせを進めやすくなります。
毎日の営業を支える店舗リフォームへ
飲食店のリフォームでは、見た目の印象と、営業中の使いやすさを合わせて考えることが大切です。焼肉店、焼鳥店、ラーメン店、韓定食店それぞれの調理とサービスに合わせて、換気、厨房、配膳、清掃の条件を確認しましょう。
最近の施工業界の動きを踏まえると、見積もりの工事範囲、適正な工期、改修前の調査を早めに整理することも欠かせません。まずは現在の困りごとを記録し、設備と内装を一緒に相談するところから、リフォーム計画を始めてみてはいかがでしょうか。
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